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ナイロン原料を完全バイオ化
東レが独自製法で成功、世界初

三友新聞 2022年9月8日号 より]

東レ(日覺昭廣社長)は、非可食バイオマス由来の糖を原料とした100%バイオアジピン酸の開発に世界で初めて成功した。

アジピン酸は衣料品や自動車部品などに用いられるポリアミド66(ナイロン66)の原料。東レの微生物発酵技術と、分離膜を活用した化学品の精製技術を組み合わせた独自の合成方法を考案した。石油由来のアジピン酸と異なり生産過程で温室効果ガスの一酸化二窒素(N₂O)を全く発生させないため、地球温暖化の抑制が期待できるという。

開発では、糖からアジピン酸中間体を生成する微生物を世界で初めて発見。さらに、微生物内でより効率的に合成が進むように人工的に遺伝子を組み換える遺伝子工学技術や、合成に最適な微生物発酵経路の設計など情報生命科学技術を活用し、微生物内の代謝経路を効率的なものに作り変えることに成功したことで、微生物が生成する中間体量を1,000倍以上に向上させ、合成効率を飛躍的に高めた。また精製の過程で中間体の濃縮に逆浸透分離膜(RO膜)を利用することで、より少ないエネルギーでの濃縮を可能とした。

東レでは実用化に向けてスケールアップ検討を開始。今後ナイロン66の重合試作、生産技術開発、市場調査などを進め、2030年頃の実用化を目指す。

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