三井のスポット

紙の博物館
創立70周年、
紙の魅力に出会えるミュージアム

和紙・洋紙を問わず幅広く紙に関する資料を収集・保存・展示桜の名所として知られる東京・王子の飛鳥山公園の一角に佇む「紙の博物館」、通称「紙博」は、
紙文化の歴史と技術を伝える、世界でも数少ない紙専門の総合博物館だ。
1Fから広がる円型吹き抜けの空間には、産業遺産コレクションの巨大な機械が展示されている

洋紙発祥の地に集う
和紙文化と製紙産業の歴史

「紙の博物館」は昭和25年(1950)、洋紙発祥の地として知られる東京・王子に開設された。その場所は、明治初期に近代製紙工場の先駆けとして、渋沢栄一が抄紙会社の工場を建設した土地。のちに王子製紙王子工場となって発展を遂げるが太平洋戦争の空襲で焼失し、唯一焼け残った同工場電気室の建物を利用して「紙博」が誕生した。

「紙博」は平成10年(1998)、JR京浜東北線を挟んで反対側に位置する飛鳥山公園内に移転。そのすぐ隣には、渋沢栄一の生涯を伝える「渋沢史料館」があり、まさに紙の歴史を語り継ぐには絶好の地と言えるだろう。戦後、分割された王子製紙は現在、王子ホールディングスと日本製紙が系譜を引くが、「紙博」を運営する「公益財団法人 紙の博物館」には、理事長に日本製紙・馬城文雄会長、副理事長に王子ホールディングス・矢嶋進会長が就いているほか、維持会員会社には王子HD系各社や日本製紙系各社など製紙業界に携わる企業が名を連ねる。社会を、暮らしを支えてきた紙に携わる多くの人々の想いと歴史が集う“紙の殿堂”が「紙博」なのである。

常設展示を一新し、
誰もが楽しめるミュージアムに

令和2年(2020)、70周年を迎えた「紙博」では館内をリニューアルし、従来の専門的な内容から広く一般の方も楽しめるよう、常設展示室を大幅に変更した。

「紙と産業」エリアでは、日本の近代製紙産業の歴史や、紙の原料と製造工程、多様な種類・用途、環境対応への製紙業界の取り組みなど、日常的に使用されている洋紙について展示。「紙の教室」エリアでは、さまざまな種類の紙に触れたり、クイズなどを通じて紙の基本とリサイクルについて知ることができる子ども向けプログラムを提供。「和紙と文化」エリアでは、紙の誕生と伝播、古くから日本文化を支えてきた和紙の歴史や用途などを知ることができる。館内には世界最初の抄紙機(模型)や製紙産業を支えてきた大型の実物機器などの産業遺産コレクションも多数展示され、さまざまな興味をそそってくれる。

また、定期的に刷新される企画展も人気だ。令和3年(2021)3月16日〜8月29日まで開催されているのは「くらしを支える紙製品 〜紙にできること〜」。ティシュペーパー、段ボールなどの生活必需品や、脱プラスチックの流れの中で重要性が高まる紙製品にフォーカスし、紙の可能性に改めて気づかせてくれる企画となっている。

円型建物は、平成11年(1999)「東京建築賞」優秀賞を受賞したユニークなデザイン。内部は吹き抜けの気持ち良い空間となっている。建物を包む飛鳥山公園の新緑を愛でるも良し、洋紙発祥の足跡を訪ね歩くのも良し。春の日差しに誘われて、のんびりと出掛けたい。

三井と製紙産業

日本の製紙産業は、明治6年(1873)に設立された「抄紙会社」からはじまる。渋沢栄一が洋紙の必要性を感じて設立に動き、三井・小野・島田という江戸時代から続く大資本に製紙を行う会社の設立を呼び掛けた。それに応じた三井は、民間抄紙会社の発起人として参画。抄紙会社は明治9年(1876)に「製紙会社」、明治26年(1893)に「王子製紙」に改称した。

明治44年(1911)、経営に苦しんでいた王子製紙再建のため、旧三井物産から藤原銀次郎が送り込まれた。藤原は工場の整理や技術の向上など強力な経営手腕をもって業績を好転させ、昭和8年(1933)には王子製紙と富士製紙、樺太工業を合併。日本におけるシェア80%強を占めるガリバー企業を誕生させ、「製紙王」と呼ばれた。

戦後、王子製紙はGHQにより分割され、苫小牧製紙、本州製紙、十條製紙の3社として発足。「苫小牧・本州」等の流れを汲む現在の王子ホールディングス、「十條」等の流れを汲む現在の日本製紙という製紙業界トップ2が三井グループに加わっている。

1F 記念碑コーナー/産業遺産コレクション

明治9年(1876)に操業を開始した「パピールファブリック」の正門や記念碑

王子製紙苫小牧工場で昭和30年(1955)頃まで使用されていた木材からパルプを取り出す装置

2F 展示室 紙と産業

世界最初の抄紙機模型(写真)や歴史的価値の高い製紙機械など、多くの展示物を目の当たりにしながら製紙産業の歴史や技術を知ることができる

3F 展示室 紙の教室

子どもを対象に、紙の知識を深めるためにさまざまなプログラムが用意されている。はがき大の紙を漉く「紙すき教室」は大人にも人気

4F 展示室 和紙と文化

世界最大級の木版画「孔雀明王像(写真)」をはじめ、和紙の着物や各地の和紙づくり道具など、他では見られない貴重な展示物が並ぶ

INFORMATION

紙の博物館

[所在地] 東京都北区王子1-1-3 飛鳥山公園内

[URL] https://papermuseum.jp/

[アクセス] JR王子駅南口より徒歩5分

[営業時間] 10:00〜16:00 (最終入館15:30)

[休業日] 月曜日(祝日の場合は開館)、
祝日直後の平日、年末年始、臨時休館日

[入館料] 大人400(320)円、
小中高生200(160)円
( )内は20名以上の団体料金

出典:三井グループ・コミュニケーション誌『MITSUI Field』vol.50|2021 Spring より

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