三井のスポット
王子ホール
銀座の中心から
クラシックの音楽文化を発信
暮らしのさまざまな局面で親しまれている音楽。しかし、人々が音楽で大きく感動するのは、やはり高度に洗練された生演奏に直接触れたときではないだろうか。コンサート専用の王子ホールは、トップアーティストによるそうした感動をより身近に、そして多くの人々に提供し続けている。
日本発世界水準の弦楽四重奏団、東京クヮルテット。王子ホールでは毎年シリーズ公演を行っており、今年の2月には3日間にわたって「結成40周年記念コンサート」を開催する
アーティストと観客を一体に

視覚的に舞台と客席との一体感が演出されている。客席のシートスペースもゆったり
東京の中心地、銀座4丁目の一角にひときわ高くそびえる王子製紙本社ビル。完成したのは平成3年のことだ。同社は新社屋の建設に当たって、社会貢献・メセナ活動*の一環として建物の2階に「王子ホール」を併設し、翌年10月にオープンさせた。そのポリシーは「音楽文化への貢献と音楽ファンの拡大」であり、同ホールは基本的にクラシック演奏を主体とするコンサート専用である。
もっとも、フルオーケストラが収容できるような大規模なホールというわけではない。ホール面積は377㎡、客席数は315席と、ややコンパクトな部類に属している。室内楽やソリストの演奏に適したサイズといえるだろう。
同ホールでは、ホール内を「アーティストと聴衆を結ぶ創造空間」と位置付けている。舞台周辺は視覚的に客席側との統一性が図られ、そのコンパクトなサイズとも相まって演奏者と聴衆との一体感を醸成する。また、残響時間にも入念な設定が行われ、「小ホールならではの音の細部のニュアンスがくまなく伝わる響き」と、アーティストからも聴衆からも好評だ。
クラシック演奏をより身近に気軽に
オープン以来、世界各国のトップアーティストが王子ホールを舞台に公演を行ってきた。少しばかり例を挙げるなら、弦楽ではベルリンフィルハーモニック・オクテット、ジュリアード・ストリングカルテット、ピアノではエフゲニー・コロリオフ、声楽では三大テノールのひとりホセ・カレーラス、バリトンのクリスチャン・ゲルハーヘル、ソプラノのバーバラ・ヘンドリックスら。きら星のようなアーティストが居並んでいる。もちろん国内からも著名なアーティストが演奏を行っているが、その多彩な顔ぶれはとてもこの誌面で紹介しきれるものではない。

楽屋に至る廊下には、ホールの歴史を語るそうそうたる出演者の写真とサインが飾られている
このようなコンサート以外にも、同ホールはさまざまなシリーズ企画を行っている。近年人気なのは、19時30分開演の『王子ホールライブハウスシリーズG‐ラウンジ』。開演時間がやや遅めなので、仕事帰りに立ち寄りやすいのだ。
また平日の昼間、銀ブラの途中に一休みしながらコンサートが楽しめる『銀座ぶらっとコンサート』や、篠崎史紀氏(NHK交響楽団コンサートマスター)をメインに著名ゲストによる室内楽が楽しめる『MAROワールド』も話題を集めている。
音楽がお好きな方は、一度お出かけになってみてはいかがだろうか。クラシック音楽がより身近に、楽しく感じられることだろう。
なお、王子ホールは貸しホールとしての事業も行っており、こちらの公演数は年間160本を越えるほど。トップアーティストの公演ばかりでなく、有望な若手にも活躍の場が提供されるほか、ジャズ演奏や狂言などが演じられることもある。

ホワイエは音楽愛好家の社交場。ときには出演者と語らいながらドリンクやスナックを楽しむことも

ホワイエ(ホールロビー)へと続く螺旋階段。音楽をモチーフにした絵画がコンサートへの期待感を高めてくれる
- メセナ活動:メセナとはフランス語で芸術文化支援を意味する。日本では「企業の行う社会貢献活動」という広義の解釈でも使用されている。
INFORMATION
[施設概要]
客席:315席/楽屋:4室/ホール面積:377㎡/
ピアノ:スタインウェイD274、ベーゼンドルファー275
※上記の内容は2010年1月15日時点の情報です。
出典:三井グループ・コミュニケーション誌『MITSUI Field』vol.5|2010 Winter より