三井百科・百景

三井家と国宝茶室
「如庵」

三井記念美術館内に再現された如庵

三井記念美術館内に再現されている国宝茶室「如庵」は茶人・織田有楽斎が江戸時代初期、京都に建立したもの。明治末期、三井総領家(北家)の手に渡る。10代当主・三井高棟は如庵を東京の今井町邸に移築。昭和11年(1936)の国宝指定を機に神奈川県大磯の別荘・城山荘に移され、幸いにも空襲を免れた。

だが、昭和45年(1970)、城山荘とともに如庵は三井家の手を離れ、名古屋鉄道の所有となる。現在は愛知県犬山市の名鉄犬山ホテル・有楽苑内で月1回公開されている。

平成17年(2005)、三井記念美術館の開館に伴い如庵の再現が進む。6代当主・三井高祐の時代から北家に伝わり、平成まで西麻布の総領家邸内にあった茶室「前後軒」の再現案も浮上したが、一般に広く親しまれている如庵とした。

大きさは原寸大とし、京都造形芸術大学教授の監修の下、茶室建築の老舗である京都の安井杢に制作を依頼。古色を醸し出すなど、茶室建築技術の粋を結集し、三井不動産や三井住友建設も施工に協力した。

こうして作られた如庵は専門家から数ある再現茶室の中でも傑作と称された。茶道具の展覧会などでは展示品と取り合わせ、その美しさを際立たせている。

なお、前後軒は館内VIPルーム(非公開)に復元され、かつての三井総領家本邸の面影を今に伝えている。

(2014年9月19日掲載)

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