三井のスポット

トヨタ産業技術
記念館

愛知県名古屋市のトヨタグループ発祥の地で、「研究と創造の精神」と「モノづくり」の大切さを伝える企業博物館「トヨタ産業技術記念館」。トヨタの情熱と産業技術史を体感できる展示が、今、海外からも注目を集めている。 記念館のシンボルとしてロビーに展示されている「環状織機」

トヨタグループの2つの原点

トヨタグループの共同事業として、発祥の地である愛知県名古屋市の旧豊田紡織本社工場跡に設立されたトヨタ産業技術記念館。2014年に開館20周年を迎え、展示のリニューアルやさまざまな記念イベントを実施。同時に、旅行サイトの口コミ評価が、さまざまなメディアに取り上げられたことで注目を集め、海外からの訪問者も増えているという。

名古屋の中心地からほど近い場所にある同館は、繊維機械館と自動車館から成り、トヨタの祖業である近代日本の発展を支えた繊維機械と、現代に至る自動車の技術の変遷を紹介している。目を引く赤レンガの建物は建築史的にも貴重な産業遺産で、工場操業当時のものを保存・活用し、歴史を今に伝えている。

トヨタといえば自動車が真っ先に思い浮かぶが、創始者・豊田佐吉は自動織機を発明した人物で、人力に頼ってきた作業の機械化を実現した。トヨタは繊維産業の事業を基盤に、佐吉の長男・喜一郎が自動車産業に進出。喜一郎は父のもとで働きながらも自動車に魅せられ、実現不可能といわれていた国産車の開発・生産を計画。トヨタの生産方式の原点とされる組立ラインを織機で考案し、後の自動車組み立ての流れ作業を想定して従業員を訓練したという。

トヨタスタンダードセダンAA型乗用車の組み立て工程

100台の繊維機械が動態展示

繊維機械館には、糸を紡いだり布を織る初期の道具から最新の繊維機械まで、約100台が動態展示されており、スタッフの実演を目の前で見ることができるものもある。

日本の織機を大きく発展させた豊田佐吉は、大工と農家を営む家庭で育った。毎晩遅くまで機織りをする母を見てもっといい方法はないかと模索し、23歳のときに木製人力織機を発明。6年後には日本初の動力織機を発明し生産性は一気に向上したが、たて糸が切れてしまうなどの不具合が続き、長い年月をかけて改良を重ねた。34年後に生み出されたのは、高速運転中にスピードを落とすことなくよこ糸の入ったシャトルを交換して布を織り続け、糸が切れたら自動的に停止して不良品をつくらないG型自動織機。当時世界一と評された技術は、世界のトップメーカーであるイギリス・プラット社に技術供与され、日本の技術者に自信を与えることとなった。

世界初の画期的発明として認められた「G型自動織機」

自動車産業技術の変遷にふれる

自動車館は、創業期から開発・生産技術などの4つのゾーンから成る。国産車を量産したいと夢を追い続けた喜一郎。創業期ゾーンでは、エンジン試作中に鋳物用の熱した鉄が吹き上がるなどの奮闘していた様子がジオラマと劇画で表される。建設当時の木造部分を移築して再現された試作工場では、鉄板を木のゲージに合わせて手叩きで仕上げている様子から、全て手作業で車を組み立てていたことがわかる。

木のゲージに合わせて手叩きにより仕上げていたトヨタ初の試作車「A1型」のボデー

開発技術ゾーンには、時代のニーズに合わせて開発してきたトヨタ車が並び、技術の変遷を見ることができる。毎年6月の開館記念日前後には、トヨタ初の乗用車とトラックである「AA型乗用車」と「G1型トラック」の走行を披露するイベントを行っている。生産技術ゾーンで登場する巨大な自動車工場では、AA型乗用車の組立ラインから、トヨタの”ジャストインタイム“という無駄のない物と情報の流れが、当時から取り入れられていたことが見て取れる。

2015年の来館者数は40万人が見込まれ、海外からの訪問者も全体の2割を超える。「失敗を繰り返しながらも挑戦をあきらめなかった当時の様子から、感じていただけるものがあると思います」と、飯島館長は語る。「研究と創造の精神」と「モノづくり」の大切さを今もなお伝え続ける記念館。当時の息遣いまで聞こえてくるようなこの場所には、トヨタ発展の礎である”情熱“が詰まっている。

初代クラウン、カローラ、セルシオ、プリウスなど、代表的なトヨタ車が並ぶ

[ピックアップ]豊田喜一郎企画展を常設化

2014年に開館20周年を記念して開催され好評を博した特別展を、2015年より常設化。トヨタ自動車の生みの親である豊田喜一郎はどんな人間だったのか、象徴的なシーンやエピソードを、本人の言葉や、ともに夢を追い続けた仲間の声で再現。優れた技術者としてだけでなく、リーダーとしても慕われた喜一郎の人生が浮き彫りになる。

スタッフ一同のおもてなしを

トヨタ産業技術記念館 館長
飯島 さん

ありがたいことに来館者は年々増加していますが、研究と創造の精神とモノづくりの大切さをきちんと伝えていくという記念館の役割は変わりません。訪れた方に心地よく見学していただけるよう、スタッフはおもてなしの気持ちを込めたご案内を心掛けています。 三井グループの皆様のご来場をお待ちしております。

INFORMATION

トヨタ産業技術記念館

[所在地] 名古屋市西区則武新町4-1-35

[TEL] 052-551-6115

[URL] http://www.tcmit.org/

[休館日] 月曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始

[開館時間] 9:30-17:00(入場受付は16:30まで)

[入館料] 大人500円、中高生300円、小学生200円

※上記の内容は2015年10月15日時点の情報です。
出典:三井グループ・コミュニケーション誌『MITSUI Field』vol.28|2015 Autumn より

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