三井百科・百景

三囲神社と
隅田川七福神めぐり

三井家の守護神である三囲神社(東京都墨田区向島)を詠んだ江戸時代の川柳の中に、現在の三越百貨店の前身で、三井家の家祖・三井高利が創業した「越後屋」の貸傘サービスを詠んだ句がある。

「三囲の雨以降傘を貸しはじめ」

越後屋では、にわか雨の時に店のマーク入りの傘を無料で貸し出して江戸っ子たちに喜ばれていた。この傘のサービスは、この句によると、江戸の俳諧の達人・宝井其角が三囲神社で雨乞いの句を詠んだことから始まったことになる。

其角は、三囲神社で雨乞いをする人たちを見て、「遊ふだ地や 田を見めぐりの 神ならば」と句を書いて神前に奉ずると、雨が降ったという。その話が江戸の町に広まった。「傘の禮すむと其角の咄なり」という句まである。

三井家が三囲神社を守護神としたのは、其角雨乞いの霊験によるものという説がある。また、江戸の三井の本拠地から三囲神社が東北にあるために「鬼門除けの神」としたという説もある。

ところで、お正月には七福神めぐりをする人も多いと思う。

隅田川七福神は江戸文化年間に開闢されたといわれ、三囲神社を出発地として神社の塀沿いに見番通りを行くコースと、北の多聞寺を出発地として三囲神社にたどり着くコースがある。三囲神社(大国神・恵比寿神)を出発地とする場合は、弘福寺(布袋尊)、長命寺(弁財天)、百花園(福禄寿尊)、白鬚神社(寿老神)、多聞寺(毘沙門天)の順になり約3kmの道のり。元旦から7日をご開帳とし、江戸から伝わる参拝方法は、各神社で神様のご分体をお受けして、宝船(三囲神社と多聞寺が多く頒布)にお乗せする。正月を過ぎても、三囲神社か多聞寺で専用色紙を入手して各神社でスタンプを押せる。

江戸っ子が参拝した神社を、東京スカイツリーを眺めながらめぐるのも楽しい。

(2013年1月18日掲載)

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