三井ヒストリー
三井の歴史を体現する、
後世に受け継ぐべき文化遺産の数々
三井が伝える美の伝統
(絵画編)
三井の繁栄示す膨大な美術品
茶道具から始まり、絵画、書跡、拓本、刀剣、染織品、調度品、人形、能面や能装束、また切手など、1600年代後半から近代の昭和初期にかけて三井各家が収集し続けてきた美術品のバリエーションは多岐にわたっている。
現在、三井記念美術館に収蔵されているこれらの品々は、美術品約4千点、切手約13万点(平成28年12月時点)といわれ、その中には6件6点の国宝、22件75点の重要文化財(三井文庫本館所管を含む)、3件4点の重要美術品が含まれている。
今回はその中から一部の絵画を紹介するが、特に円山応挙の筆による『雪松図屏風』は国宝に指定されており、三井記念美術館収蔵の美術品の中でも代表格のひとつといえる。寄贈したのは北三井家。同家は当時応挙の作家活動を支援していたことから、『雪松図屏風』以外にも『郭子儀祝賀図』『水仙図』などいくつかの応挙作品を所蔵していた。
『東閣観梅・雪山楼閣図』も北三井家による。作者の川端玉章は10代の頃に三井越後屋の奉公人であったが、絵の腕を見込まれて画家に転身した人物である。そうしたことから三井家との縁は画家になった後も長く続き、三井家邸内の障屏画など、色々な作品を手掛けている。
『日月松鶴図屏風』と『聚楽第図屏風』は新町三井家が所蔵していたもの。『日月松鶴図屏風』については、同家がこの作品をいつ入手したか時期は不明だが、三井文庫別館に寄贈された後、同館学芸員による新発見作品として重要文化財に指定された。制作時期は室町時代末期と推測され、やまと絵系屏風絵の数少ない遺例といえる。
もう一方の『聚楽第図屏風』は新町三井家8代当主の高辰が明治8年(1875)に近江大津で入手したといわれる。その他、新町三井家からは『六祖破経図』『蓮燕図』『漁村夕照図』など貴重な作品が寄贈されている。
三井記念美術館に収蔵されているこうした美術品の膨大な量と質からも、三井一族の希有な繁栄の歴史をうかがい知ることができるだろう。
三井グループ・コミュニケーション誌『MITSUI Field』vol.33|2017 Winter より