三井の特集

三井広報委員会
活動紹介パンフレット (5MB)
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世界を変える仕事で会おう。 Mitsui Mirai Meeting 2018

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公益財団法人 三井文庫

時間の流れから解き放たれ歴史の息づかいを今に残す特別な場所

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駿河町越後屋正月風景図(作者不詳)

住宅が建ち並ぶ静かな道を歩いていくと、空気が少しずつ湿り気を帯びてくる。緑の多い街並みを抜け、一層木々が生い茂る門が見えると、そこが「三井文庫」の入り口。その様相からは、時間の流れが止まったかのような不思議な気配が漂っている。館に続く道を歩き深閑としたつめたい空気に包まれていると、静謐という言葉の意味を肌から知ることができるようだ。

流れる時間を離れた不思議な静けさの中で

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杉並から新宿へと流れる妙正寺川の南、中野区・上高田は閑静な住宅地と寺院の多い街だ。周辺には日照山東光寺や哲学堂公園などがあり、土地が醸す文化的な雰囲気をそこかしこに感じられる。三井文庫に向かって歩を進めると、その荘厳なたたずまいと深い緑が放つ濃密な空気感が相まって、少しずつ時間の進み方が遅くなっていくような感覚がにじみ出す。そして、館内に足を踏み入れるや否や、すべての動きが止まったような静けさが広がっている。ひそやかに息づくのは、数百年の時を超えて受け継がれてきた莫大な史料群。歴史を司る場所だけが持つその雰囲気は、どこかなつかしい。

三井文庫の前身は、明治36年(1903)に設立した三井家編纂室だ。もともとは三井家の修史事業を目的として、日本橋駿河町の三井本館内で事業に当たっていた。三上参次(東京帝国大学教授)、横井時冬(東京高等商業学校教授)らを顧問に迎え、東京・京都・大阪・松阪の各地に散在していた三井家史料を収集整理するとともに、「三井家史」の編纂も進行。明治42年(1909)には、三井11家の当主ごとに歴史をまとめた84冊に及ぶ『稿本三井家史料』が完成。その後、『三井家記録文書目録』5冊も作り上げ、三井の歴史を一手にまとめる礎となった。

貴重な所蔵品の数々

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    三井両替店の大福帳

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    大元方勘定目録

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    團琢磨の辞令

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    三井銀行創立願書

激動の時代をくぐり抜けてきた足跡

大正7年(1918)、拠点移転とともに三井文庫へと改称。三井大元方史、呉服事業史、両替事業史などの編纂も進められたが、いずれの所蔵史料も世間に公開されることはなかった。やがて第二次世界大戦が激化し、一部の史料は焼失したものの、多くは神奈川県や山梨県で戦火を免れる。しかし、終戦とともにGHQの指令により三井本社は解散。三井文庫も必然的に活動停止を余儀なくされる。敷地と建物は文部省に売却され、所蔵史料も文部省史料館に寄託が決定。三井家への史料返還が叶い、財団法人として改めて三井文庫が再建するまでには、20年の時を待たなくてはならなかった。

現在の地で再び三井文庫が開かれたのは、昭和40年(1965)5月のことだ。その際、従来は門外不出であった三井家文書が公開されることとなったが、背景には近世史・近現代史の実証的研究の進展に寄与するという役割があった。事実、三井文庫本館の所蔵史料は、17世紀半ば以降の三井家古文書類と、明治以降の三井系企業経営資料を中心として10万点にも及ぶ。近世としては、三井家の営業統括機関であった大元方の決算簿「大元方勘定目録」や、越後屋呉服店、三井両替店の経営資料を中心に、各店の勘定目録や補助的帳簿などの決算書類が所蔵されている。また、三井合名会社から三井本社へと変遷をたどり、財閥解体指令を受けるまでの規則類、帳簿、決算表など、歴史的にも価値の高い貴重な史料が揃う。

使命は、変わらぬ姿で歴史を守り続けること

三井家の歴史を物語る史料を守り、今に伝える三井文庫。変質させずに史実を伝えるという使命が故に、ここは時の止まったような空気をまとっているのかもしれない。都内にありながらも、時代に流されることなく独特な存在感を保つ上高田の街に、その姿はよく似合う。今が昔と呼ばれるようになったときにも、訪れた者に同じ表情を見せてくれるにちがいない。

三井文庫略年表

明治36年 (1903)
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創立当初の旧三井文庫

日本橋駿河町・三井本館内に、「三井家編纂室」創立

明治42年 (1909) 『稿本三井家史料』(84冊)完成
大正5年 (1916) 『三井家記録文書目録』(5冊)完成
大正7年 (1918) 三井家編纂室は荏原郡・戸越に移転し、「三井文庫」に改称
昭和20年 (1945) 空襲で事務所全焼、土蔵にも延焼
昭和24年 (1949) 文部省に三井文庫の土地・建物を売却し、収蔵品を寄託する
昭和39年 (1964) 文部省と三井家との間で、三井家文書返還の覚書を交わす
昭和40年 (1965) 中野区上高田に「財団法人三井文庫」創立
昭和60年 (1985) 「三井文庫別館」が竣工。美術品の一般公開開始
平成13年 (2001) 約30年に及ぶ『三井事業史』編纂が完了する
平成17年 (2005) 三井文庫別館を日本橋に移転し、「三井記念美術館」開設
平成22年 (2010) 内閣府より公益財団法人の認定を受ける

※掲載の資料はすべて公益財団法人 三井文庫所蔵。

※上記の内容は2011年10月15日時点の情報です。

(三井グループ・コミュニケーション誌『MITSUI Field』vol.12|2011 Autumn より)

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■DATA
三井文庫
住所:東京都中野区上高田5-16-1
ホームページ:http://www.mitsui-bunko.or.jp/
利用条件:
原則として20歳以上の研究者に限ります。
初めての利用者は、所属機関長・指導教官など適当な紹介者を要します。
一部の資料は公開準備中。寄託史料については別途利用条件が定められています。
詳しくは、三井文庫までお問い合わせください。
開館時間:午前10時〜午後4時30分
休館日:土曜・日曜・祝日・年末年始(12月28日〜1月5日)、毎月末日(土・日曜に当たる時はその翌日)、三井文庫創立記念日(5月14日)、その他あらかじめ公示する臨時休館日(庫内燻蒸など)