三井の歴史にまつわる施設

三井記念美術館

執筆・監修:三友新聞社 / 画像提供:三井記念美術館

三井家が収集した美術品約4,000点を所蔵する「三井記念美術館」。国宝・重要文化財をはじめとする三井11家から寄贈された名宝の数々を展示・公開し、文化財の保存とともに研究活動や芸術文化の発信に努めている。

美術館内の展示室

三井家は元々、三井高利の時代から茶の湯が嗜まれ、生活文化として定着していたが、それに加え、北家(総領家)は長年にわたって表千家との親交を持っていた。また金融御用を務めていた紀州徳川家との茶の湯を介した交流もあり、そうした中で多くの茶道具が収集されてきた。また、北家は京都画壇とのつながりも深く、特に円山応挙の作家活動を援助していたことから、応挙をはじめとする円山四条派の作品も多く見受けられる。

三井各家のコレクションは茶道具、絵画、書跡、能面、能装束、拓本、刀剣、調度品、切手など多岐にわたる。

これらは戦後、第11代三井総領家当主・三井八郎右衞門高公の決断により、段階的に三井文庫に寄贈されていく。昭和59年(1984)には三井文庫別館が竣工し、翌年から美術品の一般公開を開始した。それに伴い、三井各家からは伝来の美術品や文化財の寄贈が繰り返され、その他の法人や個人からも寄付を受けるようになった。三井文庫が膨大な美術品を収蔵するに至ったのは、こうした経緯による。

三井文庫の美術品を継承

やがて、三井文庫別館の展示活動は三井記念美術館に引き継がれ、平成17年(2005)、日本橋室町にある重要文化財・三井本館内7階に開館した。所蔵する美術品は国宝6点、重要文化財71点、重要美術品4点など約4,000点。切手類は13万点に及ぶ。

国宝「雪松図屏風」(円山応挙筆)

江戸時代の絵師の巨匠・円山応挙筆の国宝「雪松図屏風」は墨と金泥と紙の白色のみで、雪の中にきらめく光を照り返して屹立する松の姿を情感豊かに描き出している。松は輪郭線を用いない没骨技法。余白が空間の広がりを感じさせる。

室町家からの寄贈は、書画、茶道具など約800点あり、中でも国宝「志野茶碗 銘卯花墻」はその中の白眉ともいうべき名品で、日本で焼かれた茶碗での国宝指定は、本阿弥光悦作の白楽茶碗(銘不二山)と、この卯花墻の2碗のみとなっている。

国宝「志野茶碗 銘卯花墻」

このほか、茶道具では長次郎作「黒楽茶碗 銘俊寛」や「大名物 唐物肩衝茶入(北野肩衝)」など重要文化財も数多く所蔵している。

重要文化財「大名物 唐物肩衝茶入(北野肩衝)」

館内の中央の展示室には、三井家とゆかりの深い国宝茶室「如庵」の内部を再現。三井家の美術品だけでなく、様々なテーマによる「特別展」を企画・開催し、東京駅周辺の3美術館とも連携して新しいアートスポットを創出している。

INFORMATION

三井記念美術館

[所在地] 東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階

[URL] http://www.mitsui-museum.jp/