会員会社ニュース
三井金属、回路形成材の展開拡大
拡大するAIサーバや微細化需要に対応
[三友新聞 2025年11月27日号 より]
三井金属(納武士社長)が、電子回路形成用材料である銅箔の展開を加速させるとともに、次世代品の事業化を推し進めている。このほど、AIサーバなどに使われる高周波基板用電解銅箔「VSP」の生産体制増強のほか、キャリア付極薄銅箔「MicroThin(マイクロシン)」のフレキシブル基板用途への採用開始、そして、次世代半導体パッケージ向け特殊キャリア「HRDP」の事業化に向けた方針を相次ぎ発表した。
VSPは鏡面のような表面平滑性を持ち、伝送損失の低減に大きく寄与することからサーバやルータ、スイッチ等の高性能通信インフラ機器のプリント基板に採用されている。近年ではAIインフラ向けの需要が急拡大しており、今年8月には台湾およびマレーシア工場の生産体制増強を発表。両工場合わせて8月時点で月産620tだった生産能力を2026年9月までに840tへ引き上げるとしたが、今回さらに約60億円を投じて、2028年9月までに月産1,200tまで生産能力を引き上げる計画を示した。
アップルマンゴーが鏡のように映る表面平滑性を持つ銅箔「VSP」
MicroThinは微細回路形成に適した1.5~5μmの厚みの銅箔を、同じく銅で作られた18μmほどの「キャリア箔」と一体的に製品化したもの。主に半導体パッケージ基板やスマートフォン用マザーボードに使用されてきたが、屈曲性が重視されるフレキシブル基板でも採用が始まった。
HRDPはキャリアを銅箔でなくガラスにした次世代品で、さらに微細な半導体パッケージ基板の回路形成用にジオマテックと開発を進めている。2023年度に投資決定したジオマテック赤穂工場(兵庫県赤穂市)の第2ラインが近く稼働開始する予定。三井金属は今年10月1日付で機能材料事業本部傘下に「HRDP事業化推進部」を設置しており、同本部の銅箔事業部や薄膜材料事業部とのシナジーを活用しながらHRDPの事業化を加速させていく考えだ。