三井の特集

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シリーズ特集 “三井と◯◯”

三井と「読書」

Special Interview 「三井グループの人に読んでほしい作品は…」

『ミッドナイトイーグル』や『M8 エムエイト』で知られる作家・高嶋哲夫氏は、三井造船玉野事業所がある岡山県玉野市の出身。三井企業と関わりの深い生い立ちを持つ。その氏に本との関わり、読書の思い出などを語っていただいた。

高嶋 哲夫(たかしま てつお)氏
1949年、岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒。同大学院修士課程修了。日本原子力研究所研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。1979年、日本原子力学会技術賞受賞。作家としての受賞歴も、第1回小説現代推理新人賞(『メルトダウン』1994年)、サントリーミステリー大賞・読者賞(『イントゥルーダー』1999年)他、数々ある。代表作のひとつ『ミッドナイトイーグル』は2007年に映画化された。日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。

――まずはご自身のことからうかがいます。ご出身は玉野市で、お父様が三井造船にお勤めだったそうですね。

高嶋 そうです。僕も三井造船に勤めようと思っていました。父は今96歳ですが、地元では三井の旧友会という集まりがあって、それに出席するのを楽しみにしています。

――玉野市の思い出は何かありますか。

高嶋 やっぱり進水式が印象に残っています。それと、父は早稲田大学なのですが、同じく三井造船に入った後輩たちが家に出入りしていて、三井の人たちとのお付き合いはずいぶんありました。今も当時の進水式の写真をリビングに飾っていますよ。

――作家の道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか。

高嶋 父は息子に三井造船に来てほしかったのですが、僕は核融合に魅せられて原研(現・日本原子力開発機構)に入り、アメリカに留学しました。でもアメリカで挫折を味わい、これからどうしようというときに周囲に作家志望がいて、「こっちのほうが楽そうだな」って(笑)。帰国して学習塾をしながら書き始めました。

――では、読書についてお聞きします。作家になるまでにどんな読書をなさっていましたか。

高嶋 小学4年のときにいい先生がいたんですよ。図書室でいろいろ読ませてくれて、僕は「ここからここまでを読んでいこう」っていう目標を決めて読んでいました。

『アルセーヌ・ルパン』とか『ファーブル昆虫記』も印象に残っています。家にも『少年少女世界文学全集 全50巻』というのがあって、よく読みました。

――中・高・大学時代はいかがでしたか。

高嶋 中学のときは本をほとんど読んでいません。玉野市って海も山もあるすごくいいところなんです。漁師をやっている友達の家の伝馬船(てんません)に乗って、島に行ったりして遊びほうけていた。

高校の時も、目先の勉強に追われて読書する余裕はありませんでした。大学でも勉強が忙しくてあまり読みませんでしたね。

――まじめな学生だったんですね。

高嶋 実験とか演習で忙しく、遊んじゃいられない状態だった。特にアメリカ時代はそうでした。でも、いつか読もうと思って本は集めていましたよ。

――今度はご自身の作品についてうかがいます。『イントゥルーダー』(*1) でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞されましたね。

高嶋 帰国して教育関係のことを少し書いたりしていましたが、賞をもらい、作家としていよいよ本格的にやっていけるなと思いました。

――高嶋作品には自然災害をテーマにしたものも多くあり、まさに現在の状況を予測していたかのようです。

高嶋 僕は神戸に住んでいるので、阪神・淡路大震災を間近に体験したのがそのきっかけです。とにかくこれは記録に残さねばダメだと思っていろいろと調べ始めて、震災から9年後に『M8』(*2) という作品を書きました。その過程で調べれば調べるほど、日本は危険な国だということがわかりました。

また、その年に編集者との打ち合わせで、次は津波をテーマにしようという話になり、書き始めたら2004年にインド洋の津波災害が起きた。それが『TSUNAMI 津波』(*3) という作品になったわけです。専門家と間違えられて、今も講演依頼がかなりあります。

――教育に関してもいろいろと書かれていますね。

高嶋 大学時代に家庭教師をやっていましたし、アメリカでもロサンゼルスの日本語学校で教えていました。教えることは嫌いじゃないんです。最初に書いたのが『アメリカの学校生活―アメリカの教育を体験した、子供とお母さんの話』(*4)

――そのときにはすでに、作家の道を歩もうと思われていたわけですね。

高嶋 そうです。教育というのは日本にとって一番大事なことじゃないかと思いますね。人づくりは国づくりの基本なので、それをライフワークにしていきたいと思っています。

――教育といえば、子どもの読書量と学力は関係すると思われますか。

高嶋 個別に調べたわけじゃありませんが、関係していると思いますね。小学生のときはとにかくたくさん読んだほうがいい。僕は、小学生には「伝記を読め」ってよく言っているんです。伝記を読むことで、いろいろな人の人生や職業の追体験ができ、人生の選択の幅が一気に広がる。僕だって伝記を読んで科学者に憧れました。

でも、読書は年齢に関係なくいいものですね。いい作品なら感動したりタメになったり、大人になってもいろいろありますからね。

――ご自身の著書で、三井グループの人に読んでもらいたいと思う作品をいくつか紹介していただきたいのですが。

高嶋 まず、『いじめへの反旗』(*5) 。これは中学生のいじめをテーマにした話です。少し前に大津市でいじめの事件がありましたね。十数年も前に書いた本ですが、今も十分当てはまる内容だと思います。お子さんのある方はぜひ。

それと『風をつかまえて』(*6) という作品も読んでほしい。風力発電を小さな町工場がつくるという話で、これを映画化するための資金を出してくれるところを探しているんですけれど、三井グループが協力してくれると大変ありがたい(笑)。

あとは『衆愚の果て』(*7) もお薦めです。政治システムをわかりやすく書いたつもりです。

――お書きになっているのは現代の話が多いですね。

高嶋 そうですね。ただ、『乱神』(*8) という時代小説も書いています。北条時宗の時代ですね。ぜひ読んでみてください。おもしろいですよ。

――ではそれも、三井グループの人たちに読んでもらいたい本のひとつということですね。ありがとうございました。

*1 『イントゥルーダー』(1999年/文藝春秋/第16回サントリーミステリー大賞・読者賞受賞/テレビ朝日ドラマ化)

*2 『M8 エムエイト』(2004年/集英社)

*3 『TSUNAMI 津波』(2005年/集英社)

*4 『アメリカの学校生活―アメリカの教育を体験した、子供とお母さんの話』(1982年/文化出版局・よつば新書)

*5 『いじめへの反旗』(『ダーティー・ユー』を改題。2012年/集英社文庫)

*6 『風をつかまえて』(2006年/NHK出版/第56回青少年読書感想文全国コンクール課題図書・高等学校の部)

*7 『衆愚の果て』(『タナボタ』を改題加筆。2012年/幻冬舎文庫)

*8 『乱神』(2009年/幻冬舎)