三井の特集

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企業探訪

東レ

「先制医療」の
未来を担う遺伝子解析ツール

※先制医療:遺伝情報などの指標をもとに、将来発病する可能性が高い病気を症状が出る発病前に見つけて予防しようという考え方

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写真:先端融合研究所

素材分野で世界をけん引し続ける東レ。異なる研究組織が横断的に技術開発できる強みを活かすため設立された先端融合研究所では、コーポレート・スローガンである「Innovation by Chemistry」(化学による革新と創造)という言葉の通り、革新的な技術を生み出している。

命を救う最先端の研究開発

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スポイトで抽出した検体を3D-Gene®に置き、遺伝子解析を行う

日本人の死因第1位はがん。3人に1人はがんで亡くなっているが、早期に発見されれば助かる見込みがあったものも少なくない。そうした助かるかもしれない命を救う技術が、東レで研究開発されている。

大正15年(1926)の創業以来、化学繊維や樹脂など幅広い事業を展開してきた東レは近年、最先端技術をかけ合わせた研究開発に注力している。2003年、神奈川県鎌倉市に設立された先端融合研究所は、遺伝子工学や細胞培養など生物を工学的に扱うバイオテクノロジーとナノテクノロジーを融合した研究機関である。同研究所の成果として、はじめて世の中に出されたのが、遺伝子を解析するツールであるDNAチップ「3D-Gene®」だ。

先制医療のカギを握るDNAチップ

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3D-Gene®の事業化に向けて語る新事業開発部門の近藤哲司さん

DNAチップは、遺伝子の発現状態を解析して、病気の原因や状態を調べることができるツール。3D-Gene®は従来のDNAチップと比べ、東レの樹脂技術によって飛躍的な感度の高さを実現し、遺伝子検出時に、より正確な解析結果が得られるようになった。従来は難しいとされていた血液からの微量な発現遺伝子を解析可能にしたことが大きな特長である。今までがんの検査には長時間を要してきたが、採血からの検査が行えることで、より短い時間と少ない負担での検査が可能となる。

「がんの検診は、胃カメラなどの苦痛や時間がかかることで検査を拒む人も多く、受診率は乳がんで3割といわれています。採血での検査が実用化されれば、今まで慎重になっていた方にも、早めに検査を受けてもらえる可能性が高まり、結果的に早期の疾患の発見につながることが期待されます。血液検査が可能となれば、定期的に検査を受けてみようとする人が増加すると見込んでいます」と新事業開発部門の近藤哲司さんは期待を寄せる。

2015年の日本医学会総会で、医療の今後を考えるテーマのひとつとして「先制医療」が制定された。これまでのように発症した病気を治すのではなく、何年か先に発症が予想される病気の芽を事前に摘み取るという医療の概念を覆す画期的なコンセプトだ。診断を受けた人が将来、どのような病気を発症しやすいかを予測し、発症前から何らかの医療的処置を施したり、環境・生活習慣を改善することで、病気の発症を抑えることができる。3D-Gene®は、この先制医療に貢献するツールとなるだろう。

研究所では、2014年からはじまった国や大学と連携しているプロジェクトで、2018年までに1回の採血(0.7㎖)で13種類のがんの検査ができる技術の実現を目指している。

生活習慣病分野診断への可能性を秘める

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3D-Gene®研究の先頭を切る滝澤聡子主席研究員

同研究所の滝澤聡子主席研究員に研究開発の苦労を尋ねると、「未開拓分野の研究のため、研究結果に明確な正解はありません。1000人分の評価をしても、次の1000人では違う答えになるかもしれない。いつも本当にこれが正しいのかを自問しながら、正解を日々探っていく感覚です。違う答えが出たときに何故かを追求して原因をつきとめられるように、若手からベテランまで知恵を絞っています。3D-Gene®での研究が進めば、将来的にはアルツハイマー型認知症や、糖尿病などの生活習慣病に関連する成果を見出せる可能性も秘めています。期待も大きいので、官民ともに協力をして一日も早いプロジェクト成果の実現に結び付けたいと思います」と語った。

3D-Gene®は、研究を始めてから商品化に至るまで6年。 研究結果が、論文発表から臨床性能試験などを経て、診断の実用化に至るまでの道のりは簡単ではない。

しかし、研究所の目指す未来が現実になれば、確実に医療の世界は変わっていくだろう。東レの独自技術を活かし、未知なる先制医療の実現に向けて、研究所の挑戦は続いていく。

3D-Gene®の特長

独自技術で遺伝子検出感度を100倍向上

これまで商品化されてきた遺伝子分析ツールはガラス製のものが多かった。そのため、光を当てて遺伝子を検出する際に検出ノイズとなる光を反射したり、反応が均等に進まなかったりと、安定したデータの検出や微量の遺伝子検出ができないという課題を抱えていた。そこで東レは独自の樹脂技術を用い、凹凸構造を持つ黒色樹脂基板を使ったツールを開発。基板を黒色に変えることで反射を軽減させ、安定した検出を実現。さらに樹脂基盤表面を加工し、遺伝子検出時に必要な核酸をムラなく均一に固定できるようになり、遺伝子の検出性能を向上させ、検出感度を約100倍程度増加させることに成功した。

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※上記の内容は2015年10月15日時点の情報です。

(三井グループ・コミュニケーション誌『MITSUI Field』vol.28|2015 Autumn より)

■企業プロフィール
ロゴ:東レ株式会社
社名: 東レ株式会社
住所: 東京都中央区日本橋室町2-1-1 日本橋三井タワー
ホームページ: http://www.toray.co.jp/
事業内容: 繊維、プラスチック・ケミカル、情報通信材料・機器、炭素繊維複合材料、環境・エンジニアリング、ライフサイエンス他