三井の特集

三井広報委員会
活動紹介パンフレット (4.4MB)
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シリーズ特集 Be Happy! episode3 しあわせの味わい方。

しあわせを味わうなら、こころから味わいたい。楽しく、美味しく、ゆっくり、じっくり。
そんな、いつまでも感じていたい“しあわせの味”とは?

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『金平糖』に結実した、しあわせの星。

工房の外にまで届く、ザーザーと雨音のような調べ。激しくなったかと思えば止み、止んだかと思えば再び大きくなる。音の正体は、直径2mはあろうかという大きな釜の中を踊るように流れ落ちる金平糖だ。

戦国時代にポルトガルから伝わったとされる金平糖は、織田信長も宣教師から贈られ、その形と味にたいそう驚いたという。公家や位の高い武士しか口にすることができず、製法は一切秘密。そのため日本人は独自に研究することで、金平糖づくりの技を開発してきた。

創業より170年、今なお手づくりを守り続ける京都の金平糖専門店『緑寿庵清水(りょくじゅあんしみず)』では、0.5mmほどの「イラ粉」を核として、釜の中で熱を加え、蜜を少しずつ掛けては乾燥させる作業を繰り返しながら、じっくりゆっくり金平糖を育てていく。朝から晩まで作業を繰り返し、仕上がりまでに要するのは1種類16〜20日。職人は、工房の気温や湿度によって蜜の濃度、量、釜の火加減や傾斜角度などを調整する。

「蜜かけ」の風景。この作業と並行してコテで金平糖をほぐす「コテ入れ」を繰り返し、少しずつ金平糖が育っていく

一子相伝の技にレシピはなく、技術の習得には「蜜かけ10年、コテ入れ10年」と20年もかかる。経験と五感が頼りの金平糖づくりで、職人が拠り所とするのが釜の中で流れ落ちる音だ。耳を傾けて状態を見極め、五感を研ぎ澄ませて1日1mm にも満たないペースでイガ(突起)を育てる。経験のない者が作業すれば、イガを出すことはおろか砂糖が結晶しない。

夏場の工房は、室温60度にも達する過酷さ。それでも機械化や空調に頼ることはせず、人の感覚による技を大切にしてきた。緑寿庵清水5代目、この道22年の清水泰博(しみず やすひろ)さんは「小さい頃から見てきていたが、こんなにしんどい仕事だと思っていなかった。でも、今はこの仕事に携わっていられることにしあわせを感じる」と言う。

受け継ぐこと。食べる人の笑顔のために、汗を流すこと。そして、次の時代に伝えること。与えられた役割を果たすことへの想いが幾重にも金平糖に積み重ねられる。

食べ方は、一粒頬張ったらカリッと噛み砕く。かわいらしい小さな星型の蕾が、口の中でぱっと華を咲かせる。

取材協力:緑寿庵清水
創業弘化4年(1847)。日本唯一の金平糖専門店として職人の手による製造を続ける京都の老舗。伝統を守りながら常に斬新な挑戦を続け、現在は年間60種類を越える多彩な風味の金平糖を作り出す。慶事の引き出物にも使われる。厚生労働大臣賞、農林水産大臣賞等多数受賞。
京都市左京区吉田泉殿町38番地の2
http://www.konpeito.co.jp