CSR(Corporate Social Responsibility)という言葉が注目され、「企業の社会的責任」が話題となっている。消費者や従業員、取引先はもちろんのこと、企業は周辺地域や社会に対しても幅広い利害関係をもつ。そして、企業規模が大きくなるほどその範囲は広がり、影響力も増大していく。すなわちCSRとは、責任ある行動によって、このようなステークホルダー(利害関係者)から企業が信頼を得るための行為ともいえる。特に、近年問われているのは、企業はいかに社会に貢献し、何を還元していくのかという姿勢。三井家の過去、そして現在の三井グループや関連団体の社会に対する多様な取り組みを紹介しよう。

未来の人材を育てる

留学生を支援し、国際交流を図る

河川を清掃し、環境を保全する
商売や取引において双方がメリットを得るとき、「WIN WIN」などと言うことがある。皆が勝利者といったことだろうか。
しかし当事者だけでなく、そのメリットの享受を周囲にまで広げていったものが、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の「三方よし」の精神だ。「世間よし」とは、地域社会に対して益をもたらすという意味である。
400年以上も昔の地域社会がそのまま現代に当てはまるかどうかは別として、それでも「三方よし」という言葉には、社会や住民なども利害関係者として認識する現代の企業CSRに通ずる理念が香っている。
豪商ならではの多額の寄付

三井慈善病院が開院した当時の絵巻が残っている。受診のために列をなす人々、ベッドに横たわる人々など8つのシーンが描かれているが、これはそのうちのひとつ。父親が回復して喜ぶ家族が描かれている(「三井記念病院 百年のあゆみ」より)
※三井慈善病院については、コラム「三井を読む」『三井記念病院と日本近代医療の始まり』を参照ください
コラム「三井を読む」三井記念病院と日本近代医療の始まり
三井高利の商道のベースには、この「三方よし」の精神が流れていた。
反物を必要量だけ切り売りするというアイディアは、消費者の利便性を汲んだものだ。不意の雨に、人々に無料で傘を貸し出したことが伝えられているが、これも「世間よし」という地域社会貢献の一種であろう。商売のためと言ってしまえばそれまでだが、しかし江戸期において、他店の場合はそうしたサービス精神が希薄だったのではないだろうか。だからこそ越後屋は支持され、多くのお客を集めたともいえる。
そして明治以降になると、三井家はその事業とは別に、巨万の富を背景としたさまざまな慈善活動を行っている。直接的に人々を救済するという観点から見て最も大きな事業は、三井慈善病院の設立であろう。
同院は社会福祉事業の一環として貧困な病者の施療を行うことを目的に、三井家からの寄付によって明治42年に開院した。しかも、開院当時は診療代が無料であり、救済を求める多くの人々で連日にぎわっていたという。
日本の代表的な植物園ともいわれる広大な京都府立植物園も、大正12年に三井家の全額寄付によって造園設立されたものだ。同園は多種多様な植物の研究の場でもあると同時に、憩いの場として現在多くの京都市民に親しまれている。
また、江戸から明治にかけて三井家が収集した刀剣、絵画、美術品などの三井文庫への寄贈は、文化・芸術面における社会貢献活動のひとつといえる。それらは三井記念美術館にて一般公開され、訪れる人々の目を楽しませている。
こうした慈善精神は、財閥解体後も三井グループ各企業の活動に受け継がれている。

京都府立植物園は24万㎡という広大な敷地面積。約1万2,000種、12万本もの植物が栽培され、写生や散策をするなど京都市民に親しまれている。三井家の全額出資により大正12年に完成した。2009年11月19日には天皇皇后両陛下が同地をご訪問されている

三井記念美術館は、日本橋の三井本館に開設され、三井各家が収集した美術品が数多く展示されている。入館は、となりの日本橋三井タワーから
社会とは人それぞれが関係を持ち、支え合うことで発展していった人間の集団である。支え合いのベースにあるのは一人ひとりが他人を思いやる心。その精神は企業も同様で、多人数の集団であればこそ、個人ではなし得ない社会に対する大きな力が発揮できるというものだ。
三井グループの中でCSRを標榜(ひょうぼう)しない企業は一社もない。地域活動、福祉、環境、文化発展への援助などそれぞれに盛んだが、中でも各社が取り組む重要な柱のひとつが人の育成。社会を構成し、よくも悪くもするのは紛れもなく人だからだ。活動の一例を紹介しよう。
東洋エンジニアリングは総合エンジニアリング業という事業分野を通じ、地域社会に対してはもちろん、世界各国の経済・社会の発展に貢献するさまざまな活動を行っている。主な活動は、国外からの要請による環境等最新技術に関するセミナーの実施(技術移転セミナー)、外国機関や政府からの要請に応じた各種の技術者に対する研修や、国内の学生の人材育成サポートなど。また、産業の現地化にもさまざまな配慮を行ってきた。こうして育った技術者は各国の産業発展の原動力となり、やがてそれは日本との国家間での良好な関係にもつながっていくはず。
国内外技術者への研修
東洋エンジニアリング

イラク石油省傘下の製油所技術者向けに日本にて研修を実施。石油産業における技術や運営ノウハウ等を伝えることにより、各国の産業復興に協力している

マレーシアにおける派遣研修の一コマ。海外での事業展開を基盤に、日本の学生向けに海外関連会社へのインターン派遣を行い、国際人としての素養を備えた人材育成を支援している
未来の人材を育てる
子どもたちに学校教育では得られないさまざまな体験のチャンスを与え、可能性を育んでいくことも企業の大切な使命。
三井住友銀行では、『子ども参観日』と『子ども銀行たんけん隊』というイベントを行っている。前者は従業員の子どもが対象だが、後者は広く一般から募集する。
子どもにとって銀行は馴染みの薄い職場のひとつともいえる。そこで、模擬紙幣でお金を数えたり、窓口での応対を体験しながら預金、貸出、為替という銀行三大業務や金融の仕組みを理解してもらおうという試みだ。お金の流れや経済に興味を持つきっかけになるという。
銀行業務の体験
三井住友銀行

模擬紙幣でお金を数える練習は職員がサポート

窓口業務も体験。接客の大切さを実感する

本物の1億円を持ってみるという衝撃的な体験も。11kgほどの重さという。実際に触ってお金や経済への興味を喚起する
三井化学は毎年11月に『ふしぎ探検隊』という子ども向けの化学体験イベントを、各拠点およびその近隣地域で行っている。昨年の出し物はジャンボスライムと入浴剤づくり。遊びながら物質が変化していく様子に「なぜ?」という気持ちを起こさせ、化学に興味を持ってもらう。子どもたちの理科離れが懸念される昨今、将来に期待が寄せられる試みといえるだろう。
化学への興味を喚起
三井化学

子どもたちは何でもやってみたがるもの。子どもたちの理科離れを助長しているのは、実はチャンスを与えない大人なのかもしれない。将来、この中から科学者が育ってほしいものだ

スライムづくりにもう夢中。楽しく遊びながら学べるのがいちばん

化学反応で物質が変化していくたびに目が輝いていく
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さて、同じ三井グループの一員であるあなたの会社はどんな活動を行っているだろうか。日常業務だけでなく、自分の会社の社会貢献活動にもぜひ目を向けてほしい。






